
今回は「ヴォーカルの、声の音域を考慮した作曲法」について書いてみます。
歌モノの曲を作るのであれば、やはり忘れてはいけないのが
「その曲を歌うヴォーカル」のことですよね。
歌う人の個性を活かすことが大切ですが、
まず最初にチェックするべきなのは「声の音域」でしょう。
これは曲作りにとって、思っている以上に大きなポイントになります。
まずは声の音域を知ろう
声の音域は人によってさまざまです。
一般的には、1オクターブ前後(約10度くらい)の範囲で収まる人が多いでしょう。
2オクターブ以上出せる人は、かなり広い音域を持っているといえます。
では、その音域をどうやって調べれば良いのでしょうか?
いろいろ方法はありますが、一番簡単なのは楽器を使うことです。
ピアノやキーボードがあれば鍵盤を弾きながら、
無理なく声を出せる最低音と最高音を探してみましょう。
ギターでもかまいません。
もし楽器が手元にない場合は、スマホのアプリでもOKです。
「出せる音域」と「良い声が出る音域」は同じではない
よく誤解されがちなのが、「出せる音域=曲に使える音域」と思ってしまうことです。
たとえば、2オクターブ出せるヴォーカルがいたとしても、
そのすべてが美しい声になるわけではありません。
実際には、その中の限られた範囲が「良い声が出る音域」です。
ここを無視して曲を作ってしまうと、
歌うときにいろいろな問題が出てきます。
高すぎる音では声が裏返ったり、力んでしまったりして
聴いていて苦しそうに聞こえます。
逆に低すぎる音だと声がこもってしまい、
メロディがはっきり聴こえません。
特に、作曲初心者の方は「サビはもっと高くして盛り上げたい!」と考えてしまいがちですが、
無理に高音を使うのは逆効果です。
むしろ、その人の声が「一番よく響く音域」を中心にメロディを組み立てる方が、
ずっと聴きやすく、歌う側も気持ちよく表現できます。
これを意識するだけでも、ヴォーカルの魅力を引き出す曲になりますよ。
男性ボーカルと女性ボーカルの、音域の違いを理解する
作曲の際に意外と見落とされがちなのが、男性と女性では音域が大きく異なるという点です。
以下の図は、男性と女性ヴォーカルの「出すことができる音域」と「良い声が出る音域」を、
C4(48)を基準に、よく使われるレンジで可視化したものです。

図1:男性・女性ヴォーカルの音域比較(J-POP実用レンジ)
出典:『The Range Place – Vocal Range Data』(国際的な歌唱レンジ分析コミュニティ)
Berklee College of Music “Understanding Vocal Range”
図1を見るとわかるように、男性はB2〜A4、女性はG3〜E6あたりが「出すことができる音域」、
「良い声が出る音域」は、それよりも狭い音域です。
作曲する時、このようなメロディ音域を意識することで、
歌いやすい曲を作りやすくなります。
※僕の経験上、女性ヴォーカルの「良い声で出せる音域」の高音域は、
このグラフよりは少し低い人が多いと思います。
ただ、声の音域は個人差が大きいです。
曲を歌うヴォーカルが決まっている場合は、
ヴォーカルの「出すことができる音域」と「良い声が出る音域」を実際に調べてから、
その音域に合わせて作曲しましょう。
作曲する時のメロディ音域は、サビを中心に考える
曲のメインといえば、やはり「サビ」ですよね。
「サビ」で「良い声が出る音域」を多く使うことが、
ヴォーカルを活かす曲を作る秘訣です。
一方で、「Aメロ」や「Bメロ」は少し音域を下げても構いません。
むしろ、「サビ」との対比をつけるためには、下げたほうが効果的です。
- 「Aメロ」で低めの音を使い、
- 「Bメロ」で少し持ち上げ、
- 「サビ」で一気に盛り上げる
という音域バランスを意識するだけで、
メリハリが付き、リスナーを飽きさせない曲になりますよ。
老若男女みんなで歌える曲を作るには?
もし、何かのイベント用など、老若男女「みんなで歌える曲」を作りたいなら、
音域をできるだけ狭くするのがコツです。
だいたい1オクターブ以内に収めると、
小学生から大人まで無理なく歌えるメロディになります。
実際に、童謡や合唱曲の多くは、この範囲で作られています。
世代や性別を超えて親しまれている曲は、
無理なく歌える音域に収まっている場合が多いです。
また、初心者が作曲を練習するにも、
1オクターブの中でメロディを作ってみる練習はおすすめです。
範囲が狭いぶん、リズムの工夫やメロディの動かし方といった
アイデアで勝負することになります。
こうして「限られた音域で魅力的な曲を作る力」を磨いておけば、
老若男女、だれでも口ずさめる曲が作れるようになりますよ。
以上のように、声の音域を考慮することは、
作曲のとても大事な要素です。
「出せる音域」と「良い声が出る音域」は違う、
ということを意識しておくだけでも、
曲の完成度や歌いやすさは大きく変わります。
ぜひ、音域を意識して作曲してみてくださいね(^◇^)ノ
→オンライン作曲講座「わくわく作曲先生♪」トップページへ戻る
→音楽制作の知識大全「音楽レシピ(作り方)の図書館」のもくじへ戻る